貴方を失うぐらいなら


















































あなたをうしなうぐらいなら















































































いつからか



























あなたに守られていた私が無性に情けなくなって






























いつかあなたが私の所為で死んでしまうのではないかと






























だから     あなたに守られてあなたを失うぐらいなら






























あなたを守ってこの身を焼こうと思った































っ!!!!」


「っ!!」




















――――― 深く 深く 強靭な本質を形に成した刃金が 撓う衣を貫く















――――― 肉薄された体躯は ただそれを受け入れるのみ















――――― 酷く澄んでいない音が 酷く急がずに目の前が 生じて消え失せて行く















――――― 紅い紅い 幾筋もの蛇は 自らの意志を成し遂げるように あるものはその姿を割き あるものは滲み















――――― 腕の中のあたたかい 愛おしい 焦がれた存在は 強張る身体で凭れてくるものを支えた


















































「リオン」

「何だ」

いつものように部屋で個人の用事をしながら、いつものように素っ気無い返事に微笑みながら。










「もう、私を守らないで」










「なっ!!!?」










君は僕に、消失感を沸き立たす残酷な言の葉を謳った。











「おいっ、一体どう……」

読んでいた本から慌てて顔を上げても、そこに求めた姿は無かった。











少しの隙間を有する扉が、風で情けない音を立てながら閉じた。











彼女との隔たりが、完全なものとなったようだった。










自分では守っているなどという驕った感情は無かった。










だがこちらが見ていると時折不自然なほど間の抜けたことをして放って置けなかった。









思えば決して弱くない彼女にとってそれが苦痛だったのかもしれない。








































『リオンー!早く行こうよ!』

黄昏時のダリルシェイドの町を踵の少し高いブーツで駆け抜ける少女。



変わらないお前はいつまでその眼に僕を映すだろう



『そんなに急がなくたって食事は逃げたりはしない』

決してその後を追わずにペースを保つ痩躯の少年。



どんなに距離を作ったってあの頃は追い着くことが出来た



『そーゆー問題じゃないでしょー!?確かデザートは特製のプリンだってマリアン言ってたなー』

少女のニヤリとした笑みに後ろにいる少年は気付かないで

聞いた途端に表情は変えず、内心で歓喜の宴を始めたが平静を装って構える。

『………走るぞ』



何も言わなくても通じ合えていたような気がした



『うっわ、早……って待ってよ!!』

素晴らしいほどの勢いで走り出した少年に少女が追い着いたのは、少年が屋敷の前で荒いだ息を整えているころだった。



お前が僕の前を行くようになったのは何時からだったか










その路はいまだ残されているだろうか、その路は彼らを導くだろうか






























気配を察した少女が警告すると、慣れたように少年は剣を振る。

『リオンっ後ろっ!!』

『はぁっ!!』

『でぇいっ!!』

止めに気合ともども入れられた蹴りは傷を開き命を絶つ。



たった一度呼ばれたことにさえ喜する自分は愚かしいのだろう



『……ふぅ』

ひと段落した戦闘の余韻が晴れぬままに、少年は溜めていた息を吐き出すように呼吸する。

『おやおや坊ちゃんはもうお疲れでちゅかぁ〜?』

『………』

からかった少女に無言のまま剣を抜き、つかつかと歩み寄った。



他愛ない事々も今は愛おしくて



『うわぁぁっごめんごめん謝るから切らな……』

ざっと何かを切る音に振り向き奇麗に染まった少年の剣を見つめる。



守れると高を括ってあの頃はそれに満足で



『背後のモンスターに気付かないようでは、僕の背中は預けられんな』

そう言われも仕方の無いことだった。

未熟すぎたこの技量は半端なだけで己に要らぬ過信を埋め込む。

『………ごめんなさい』



僕が守るとだから強くなる必要なんてないと言えたら



『……悔しいなら追いついてみろ』

『……いつか絶対、追い越してやる』

『ふん』



今もお前は腕の中にいただろうか










交わした誓いを今は遠くへのせて、そして彼らは道を創る





























『スタン〜ね、デートしに行こうか』

『っんなぁうええぇっ!!!?』

軽く体重をかけられた肩よりも、後ろ斜めからの視線は幾倍も重く。

『………』



あの馬鹿を殺してでも阻止してやろうと本気で考えた



『冗談だよ、冗談』

全く気付かずにケラケラ笑いながら肩を組まされると流石に黒い影が動き出した。

『いや、殺されそうなほどの視線に射抜かれて……』

『ん〜?どうかしたのリオン』

『………』



鈍過ぎていらいらして時には酷なことを言うかもしれない



何も告げぬ口の主は組んでいた両の腕を解き、正しく光速で青年の首を絞める。

『っぐふえぇっ……くびっ首がぁぁ…し……ふぅ…』

『リオンっスタンが死にそうだけどっ!?』

『お前の所為だ』

『何がっ!?』

『………もういい』



それでも手放すことだけは何が何でも




ぺっと青年を投げ捨て不機嫌をそのままに去ろうとする少年を、少女は反射的に追いかけた。

『えっ!ちょ、待ちなさいよ理由ぐらい……』

――――――(チーン)』

勘弁してくれと嘆いていた声は誰に伝わるのか。



はっきり気付いた時はもう遅かったのかもしれない










先を行く少年の路を少女は追いかけ、誓いを果たすのは不定の刻限



































続。(仮定)


2004.7.13

修正 2004.8.2

本当は一話の予定でした。

余分な空間の為前後に分ける模様。


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